ステロイド剤がアレルギーを悪化させる
こんにちは。京都市伏見区のさくら鍼灸整骨院 木藤です。
昨日に関西で大きな地震があってから、丸一日が経とうとしていますが、
まだまだ余震もあるので、注意が必要です。
皆様、お氣をつけくださいね。
本日のテーマは「ステロイド剤がアレルギーを悪化させる」です。
14名の小児を対象にステロイド剤の塗布前と塗布後1ヶ月後の卵白の特異的IgEを測定
したところ、14名中13名が1.5倍~3倍に増えました(1名は異常なし)。
もちろん、特異的なIgEの増加は、そのまま症状の悪化度合いと比例している訳では
ありませんが、少なくとも、免疫抑制により炎症を抑えるはずのステロイド剤の使用が、
同時に炎症を増強する可能性があるIgEを増加させている=アトピー性皮膚炎を
悪化させる恐れがあることは確かです。
2013年には世界的に著名な科学雑誌ネイチャーで、黄色ブドウ球菌が産生する
毒素(デルタトキシン)が肥満細胞を活性化し、アトピー性皮膚炎を誘発する、という
論文が発表されました。
通常、アレルギー炎症を引き起こすIgE抗体は、アレルゲン(抗原)に対するカウンターとして
作り出されますが(抗原抗体反応)、黄色ブドウ球菌が出すデルタ毒素は、アレルゲンが
なくても、IL4(インターロイキン4)を介してIgE抗体を増強、さらにそのIgE抗体が
肥満細胞を脱顆粒されることで、炎症、痒みを生み出していることがわかりました。
また、IgEには3つの受容体(FcεRⅠ、FcεRⅡ、Galectin-3)があります。
健常な方の、B細胞は表面(surface)にIgEを持ちませんが(sIgE-B細胞)が、インターロイキン4などの
刺激を受けることで、表面にIgEを持ち、さらにガレクチンー3(Galectin-3)の受容体も発現した
sIgE+B細胞へと変化することが確認されています。
そして、アトピー性皮膚炎の方には、このsIgE+B細胞が多いことがわかっています。
このガレクチンー3を発現したsIgE+B細胞は、アレルゲンと結合することで、、IgEを放出します。
本来、IgEなどの免疫(抗体)はアレルゲンなど異物を感知したことでTリンパ球が司令を出し、
B細胞が作り出すのですが、このガレクチンー3の受容体を介した反応は、通常の抗原抗体反応を
介さずにIgEを作り続け、体内のIgEが爆発的に増えることで、アレルゲンへの感受性を高めた状態に
陥らせます。
健常な方には少ないsIgE+B細胞へと変化させる、インターロイキン4を増やす要因は、大気中の
化学物質や運動不足、睡眠不足などがありますが、ステロイド剤もインターロイキン4を増やすことが
確認されています。
つまり、ステロイド剤の連用は、インターロイキン4を増加→sIgE-B脂肪をsIgE+B細胞へと変化させる
恐れがあり、この点からもアレルギー反応を増強、アトピー性皮膚炎を悪化させる要因になることがわかります。
1994年の日本皮膚科学会雑誌104巻では、「アトピー性皮膚炎における黄色ブドウ球菌-皮疹部、
無疹部における黄色ブドウ球菌検出率、ファージ型および薬剤感受性について-」という論文において、
アトピー性皮膚炎患者さん48例全例から黄色ブドウ球菌が検出されたことが報告されています。
さらに、2015年5月には、慶應義塾大学医学部から「皮膚細菌巣バランス破綻および黄色ブドウ球菌の
定着がアトピー性皮膚炎の炎症の原因となる」という論文が発表され、黄色ブドウ球菌や
コリネバクテリウムボービス菌など異常な細菌叢が皮膚に形成されることがアトピー性皮膚炎発症や
悪化の原因となることが明らかにされています。
ステロイド剤は、「免疫抑制」の効果を持つ薬剤です。
そのため、長期連用による感染症の誘発は主な副作用として示されており、ステロイド剤の長期連用が、
健全な皮膚の細菌叢を乱し、こうした黄色ブドウ球菌など異常な細菌叢の形成を促すことで、
デルタ毒素などによるIgE増強からアトピー性皮膚炎を悪化させていることが、最近は研究者の間で
指摘されるようになってきました。
このようなステロイド剤の使用によりアレルギーを増強することを示す医学的な論文は、数多く報告されて
いますが、ステロイド剤がアレルギーを悪化させる恐れがあることを「ステロイド剤を処方するお医者さん」は、
あまり患者さんに指摘せずに処方している傾向が強いです。
もちろん、メリットゾーンの中では、皮膚の健全な細菌叢を乱す恐れは少なく、アレルギーが増強される
リスクは小さいと言えます。
しかし、デメリットゾーンに入ってくると、皮膚のバリア機能そのものが低下した状態に陥ることで、
そこにステロイド剤の免疫抑制効果が健全な細菌叢の形成を妨げ、黄色ブドウ球菌の定着を招きやすく
なることは確かなことですので、注意する必要があります。
このように、ステロイド剤の使用による影響は、「メリットゾーン」の中に留まっているのか、
「デメリットゾーン」に足を踏み入れた状態にあるのかによって、大きく異なってきます。
さらに、デメリットゾーンの奥深くまで進行することで、よりステロイド剤の使用による影響
(アトピー性皮膚炎そのものの悪化など)は受けやすくなります。
もちろん、ステロイド剤を使用している間は、デメリットゾーンにいても、受容体消失による
影響などが大きくなければ、薬剤の効果により炎症は抑えられ痒みも落ち着かせることができます。
しかし、その一方、身体の中では、IgEが増強され、炎症を作り出す力はより強まっていきます。
つまり、皮膚の表面上は、ステロイド剤という薬剤で「マスキング」されて問題がないように見えても、
マスキングされた下は、問題が積み重なっていく状態、ということになります。
ステロイド剤の抗炎症効果で炎症が抑えられている間は大人しくしても、何らかの要因(季節の変わり目、
精神的・身体的なストレス、環境の変化、環境中の化学物質、睡眠不足や栄養の過不足、運動不足など)が
加わることで、溜め込んだIgEが一氣に炎症を作り出すと、悪循環の輪が形成されることで、皮膚の
ダメージとアトピー性皮膚炎そのものが悪化を繰り返すことになってしまいます。
今、自分がゾーンのどの立ち位置にいてステロイド剤を使っているのか、しっかり把握して
おくことは大切となります。
(全ての上記画像はネットからお借りしています)
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